手を動かす PM の、通す線と、止める線
決裁は下りない。データがあるかは誰も知らない。効果の測り方も決まっていない。
理由ははっきりしています。AI エージェントは、発注できる対象ではない。
プロジェクトマネジメントの標準を、実務の記録の側から読み直します。
コードは 1 行も載せません/ 主役は判断表・書式・チェックリスト・対応表
判断材料を持たない人が、判断させられている。
— 第00章「発注できないものを、発注しようとしていた」より
通常の開発なら、何を作るかを決める人とそれを届けきる人を分けられます。 AI は違います。実現可能性が、データを見るまで、動かしてみるまで分からない。 すると「何を作るか」の決定が、データ理解やモデル評価の途中でしか下せなくなります。
仕様は現場の観察からしか出ず、価値は実データでしか測れない。要件定義書を書いて渡す、という手順がそもそも成立しない。
その返事は、ほぼ常に「テーブルはあります」の意味。行数・有効行数・鮮度・到達権限の 4 つを数えるまで、計画は立てられない。
やらないものを落とせていないから資源が分散し、どれも本番に届かない。Gartner は「生成 AI プロジェクトの 30% 以上が PoC の後に放棄される」と出しています(2024-07-29)。
人の誤りは間違って見えるが、AI の誤りは正しく見える。生成速度とレビュー速度の比が壊れていて、忙しい PM ほどその差で損をする。
本書の題は「PoC で終わらせない」ですが、中身の半分は「終わらせる」話です。 00 章で最初に断ります。読者の期待を一度裏切ってから、なぜそれが同じことなのかを説明します。
PoC で終わらせないための最短経路は、終わらせるべきものを早く終わらせることである。
— 第00章「はじめに」より
02 章の「やらない理由を先に 3 つ書く」と、Part 5 の「畳む」は、残った 1 本を本番へ届けるための工程です。
例外を作りません。PM の職務は作ることではなく、作らない判断を安く下せるようにすることだからです。
現場に張り付いて観察する。スコープ・費用・関係者の 3 つを握ったまま現場に座れるのは PM だけ。
標準が立上げに置いたプロセスはいちばん薄い。その薄いところが、本書で最も重い。
アジャイルのスプリントは前へ進む。データのスプリントは、後ろへ戻る。戻る回数が最も多い段。各章は「戻った回数」を必ず書きます。
PM が手を動かす目的は実装力ではない。仕様の曖昧さを、実装が通るかどうかで判定すること。
効いたかの式は、作る前に決める。後で決めると、必ず自分に都合よく決まります。
各章末の「やってみる」の直前に、この章のものをどうやって畳むかを 1 節置いています。
各章末には必ず「やってみる」を置いています。標準の用語は、章の中で 1 回だけ名前を出す目印であって、章の主役ではありません。
コードは 1 行も載せていません。実装が要る箇所は Vol.1 と Vol.3 に送っています。 これが、読者層の分裂を防ぐ唯一の手段だと考えました。
写真は制作中のイメージです。ページ数・造本は最終版で変わることがあります。
AI 案件に巻き込まれ、可否を判断させられている人。
止め方も終わらせ方も決まっていないまま、本数だけ増えている人。
「作らせる側」に回ったことに違和感がある人。
「作り方は分かった。で、それをどう通すのか」と思った人。
本書は標準の解説書ではありません。PM が手を動かした記録に、標準の名前を後から付け直した本です。
読む順序はありません。どの巻からでも単独で読めます。